みなさん、こんにちは。
大郷町歯科医院、院長の室月です。
突然ですが、タバコは歯周病にどのような影響を与えていると思いますか?
良くはないだろうなと考える方はいらっしゃると思いますが、何が悪いかまでは分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今日は喫煙がどのようなメカニズムで、歯茎に対して悪影響を与えているか詳しくお話ししていこうと思います。
近年、喫煙と歯周病についての疫学的研究が数多く報告されています。
喫煙は、全身の臓器に大きな影響を及ぼし、悪性新生物、心臟血管疾患、慢性閉塞性肺疾患などの多くの生活習慣病の重要なリスクファクターとなることが明らかになっています。
また、受動喫煙の影響についても、喫煙者の吐き出す呼吸煙と副流煙は有害成分の濃度が高く、ニコチンは常習喫煙者より非喫煙者に対して作用が強いとされ、肺癌発生率は受動喫煙者で2倍に達するとも報告されています。
このように、喫煙は、喫煙者ばかりでなく、周囲の非喫煙者の健康にも悪影響を及ぼします。
歯周病に対しても喫煙は主要なリスクファクターであり、喫煙の歯周炎に対するオッズ比は 3.9716、受動喫煙の歯周炎に対するオッズ比は1.5717であると報告されています。
最近は、健康志向の高まりの中、喫煙場所の減少やタバコの値上げなどもあって、喫煙者の減少や喫煙量の減少が見られますが、欧米諸国と比較して、わが国の喫煙者率は依然として高いです。
(1) 喫煙の歯周組織に対する影響のメカニズム
喫煙により暴露される最初の臓器は口腔です。
タバコの中には「ニコチン、タール、 一酸化炭素」の三大有害物質をはじめ200種類以上の有害物質が含まれており、60種類以上の物質に発癌性があります。
ニコチンは、皮膚や粘膜に急速に吸収され、血管収縮を起こし、微小循環系機能の低下による血流の減少が起こる結果、歯肉は低酸素状態になり、歯周ポケット内での歯周病原細菌の定着・増殖を促進させる可能性が示唆されています。
好中球に対しては、走化能や貪食能を低下させ、酸素依存性殺菌能の阻害、LPS刺激による MMP-9の分泌増加が認められています。
マクロファージに対しては、IL-1、 TNF-a、 PGE2産生を誘導、また、その他の炎症関連メディエーターの分泌変化、活性低下から免疫反応の低下、創傷治癒の遷延化を引き起こすと報告されています。
リンパ球に関しては、歯周病原細菌に対する抗体産生が抑制されるとの報告や、CD4陽性T細胞と CD8陽性T細胞のバランスが変化することが明らかになっています。
さらに、線維芽細胞では、ニコチンをはじめとする物質により、コラーゲン産生能の低下が起こり、歯周組織の修復・再生が影響を受けます。
(2) 口腔内の臨床的所見
臨床的な喫煙者の口腔内の特徴は、歯面の着色、歯肉の黒色化(メラニン沈着)、口臭、 歯肉の線維性肥厚、味覚低下が代表的なもので、口腔内はきわめて不健康な外観を呈しています。
また、喫煙者では歯周組織の炎症症状が抑制されており、 BOPが少なく、歯肉の発赤、腫脹が減弱、歯肉溝滲出液量も減少し、炎症がマスキングされていることが報告されています。
このことから、喫煙者では歯肉の炎症の兆候が歯肉表面に現れにくいため歯周病の初期症状を自覚しにくく、かつ、非喫煙者と比べて進行が速いため、重症の歯周病となって初めて気づくケースも少なくないのです。
(3)禁煙対策
現在、歯周病のみならず全身疾患への対策として禁煙の必要性が謳われています。
禁煙は歯周病の予防、治療効果を高めることができると報告され、かつ、口腔内所見から診断しやすく、歯周治療の口腔清掃指導での動機づけや、習慣を変容するなど両者の治療の共通点も多く、多くの歯科医師が禁煙サポートに積極的に取り組むべきであるといわれているのです。
いかがでしたでしょうか。
タバコは嗜好品であるがゆえ、断つのを自己判断に委ねる場合も多いですが、身体に及ぼす悪影響を理解した上で、今後付き合っていくことが必要なのかもしれないですね。