みなさん、こんにちは。
大郷町歯科医院、院長の室月です。
今回は、乳幼児のおっぱいを吸う吸綴、食べ物を噛む咀嚼の発達についてお話ししていきます。
胎生9週をすぎたころ、胎児は羊水の中で開口運動や舌運動を開始します。
嚥下運動は12週ころにはじまり、羊水を吸飲しています。24週ころには吸綴運動をはじめとする哺乳に関係する反射が発現していて、出生直後から哺乳を行うことができます。
したがって、早期産であっても必ずしも経管栄養ではなく、自力で栄養摂取のための哺乳が可能な場合があるのです。
生後4~5か月ころに乳児の咀嚼能力の発達に必要とされる生理的成熟段階に達するとされています。
これが順調に発達するためには、咀嚼の学習体験を重ねることが必要であり、その学習がストレスで不適応にならないよう、やわらかいものから徐々にかたいものに適応できる範囲内で段階を追ってすすめる必要があります。
この過程が順調にすすみ固形食に移行されると、咀嚼能力は段階を追って発達しますが、不適当であれば咀嚼能力の発達は阻害されてしまいます。
離乳開始や離乳期のすすめ方が不適当な場合は、咀嚼能力は3~4歳になっても身につかないことがあります。
また、時期を逸すると、あとから練習しても収得の効率がわるくなってしまいます。
乳児は、出生直後から乳首を口の中に取り込み、吸啜とよばれる動きをとおして乳汁を摂取し、乳児嚥下の動きによってその乳汁を体内に取り込んでいきます。
この一連の哺乳の動きは、哺乳反射とよばれる原始反射(発達に伴って消えていく反射)によってなされています。
哺乳反射(追いかけ(探索)反射、口唇反射、捕捉反射、吸綴反射)は、口腔の容積の小さなときに、乳首から乳汁を摂取するのに好都合な、舌、口唇、顎などの器官の反射様一体動作です。
探索反射により乳首を探索し、捕捉反射により捕捉した乳首がら吸啜を行う、吸啜反射により顎や舌で乳輪部や乳首を押して乳汁を噴出させ、口唇を密着させ口腔を陰圧にして乳汁を吸飲します。
乳汁が口腔に入ると、舌と軟口蓋が離れ、乳汁は食道を経て胃に入ります。
乳汁が嚥下されるとき舌底が上がって口と咽頭の通路を塞ぎ、また、口蓋帆を引き上げて鼻腔と咽頭との通路を塞ぎ、咽頭を引き上げて気道を塞ぎ、むせないようにします。
このように、吸綴、嚥下は呼吸とともに協調的に連動する反射運動であるが、ときに非協調となって不安定になりやすいです。
母乳では、吸引と舌および歯槽堤で押し出す圧出により乳汁を摂取しますが、人工哺乳では吸引圧が主体であり、母乳に比べ空気を飲み込んでいるため、母乳哺乳以上に排気(ゲップ)させる必要があるのです。
哺乳運動が先天的な機能であるのに対し、咀嚼などの摂食機能は生後の学習によって獲得される機能です。
出生後獲得する機能のなかで摂食機能は、ヒトの生命維持のための基本的な機能であるため、早期に発達します。
また、顎や歯などの形態的な成長と関連深いことからも、その発達の最適な時期は早期であるともいえます。
つまり、機能発達と形態成長は互いに深く関連しながら、早期に摂食にかかわるさまざまな発育がなされてくるのです。
固形食物を取り込むための摂食機能は、その一連の運摂動から、捕食(食物を口に取り込む動き)、咀嚼(食物を潰して唾液と混和する動き)、 嚥下(咀嚼された食物を飲み込む動き)の3つに大別されます。
これらのなかで特に注目されるのが咀嚼運動です。
咀嚼は、捕食一咀嚼一嚥下という常に食物を取り込む一連の流れのなかでなされる機能です。
摂食機能の発達と食行動の発達は、形態の成長に合わせて機能が発達し、それが自立して生きるための食行動の発達の基となっています。
嚥下は、咀嚼後の食塊が口腔内から胃まで送られる一連の過程をいい、顎、咽頭、食道の各筋群の随意運動と不随意運動の協調運動によって行われます。
すなわち、嚥下は3相からなり、第1相は口腔から咽頭までで、 随意運動により行われます。
第2相は咽頭から食道までで、反射(不随意運動)によります。 第3相は食道から胃までで、反射(不随意運動)によります。
乳児期(乳歯が萌出する時期まで)の嚥下の特徴は、上下顎歯槽堤が離れ、その間に舌が介在する乳児型嚥下を示します。
乳児型嚥下は生後1年すぎまでに消失して、上下顎の歯が咬合して口唇は閉鎖され、舌尖が口蓋に接する成熟型嚥下へ移行します。
乳歯列の完成過程で乳児型嚥下が消失しないと不正咬合(開咬など)を引き起こす可能性が高いと考えられています。
また、乳児型嚥下が抜けきらないために前歯部開咬が生じると
嚥下時に舌あるいは下口唇を空隙に入れて口腔内を陰圧に保とうとします。
このような異常嚥下癖があると不正咬合はさらに悪化するのです。
いかがでしたでしょうか。
今回は吸綴、咀嚼についてお話ししてきました。
ご不明な点がございましたら、遠慮なくお尋ねください。