みなさん、こんにちは。
大郷町歯科医院、院長の室月です。
今日はタイトルの通り、歯周病は遺伝するのか。
あるいは遺伝的要素はあるのか、ということをお話ししていこうと思います。
まず、歯周病は口の中の細菌による感染症であり、歯周病原細菌の病原因子と生体反応との相互作用により、発症・進行します。
さらに、喫煙やストレスなどの環境因子や全身状態などの宿主因子も影響しており、このため歯周病は多因子性疾患と呼ばれています。
遺伝因子というのは、宿主因子(全身状態、疾患、年齢など)に分類されるリスクファクターであり、個体が生得的に有する疾患に対する罹患しやすさ、悪化しやすさを意味しています。
歯周病における遺伝因子は歯周病感受性と関連があるとされていて、実際に一卵性双生児では二卵性双生児と比べて、歯周病の重症度がより類似していることが明らかになっています。
細菌感染に対する生体反応では、様々な遺伝因子の影響を受けます。
個人特有の遺伝因子により、細菌レベル、炎症程度、歯周組織の代謝レベルが各々調節され、その結果として歯周病感受性に個人差が認められるようになります。
歯周炎は発症時期と進行速度により、侵襲性歯周炎と慢性歯周炎に大別できます。
大多数をしめる慢性歯周炎では、その進行に関わる遺伝因子は約50%という報告があります。
一方、罹患率がきわめて低い侵襲性歯周病は家族集積性がみられることもあり、遺伝因子の関与が慢性歯周炎と比べて大きいとされています。
現在まで、多くの論文結果をまとめるメタ分析というものが行われ、歯周病感受性との関連性が有望なものとしては、インターロイキンー1遺伝子、Fcレセプター遺伝子、ビタミンD遺伝子があると言われています。
炎症性サイトカインの継続的あるいは過剰な産生は歯周組織破壊に関連します。
インターロイキンー1は代表的な炎症性サイトカインの1つです。
これまで、欧米の重度慢性歯周炎群でインターロイキンー1遺伝子陽性率が高いことが明らかになっています。
しかしながら、分布には民族差があり、中国や日本などではインターロイキンー1遺伝子陽性率は極めて低く、歯周病感受性との関連は報告されていません。
Fcレセプターは白血球表面に認められ、抗体と結合するレセプターです。
Fcレセプターを介して白血球は最近抗体複合体と付着して、病原細菌を貪食・殺菌することができます。
このFcレセプター遺伝子多型は歯周炎感受性と関連することが報告されています。
日本人やアフリカ系米国人はこのFcレセプター遺伝子多型が健常者群と比べて侵襲性歯周炎患者群で多く認められます。
ビタミンDレセプターは血清カルシウムやリンの代謝を調節することから、歯槽骨吸収に関与する可能性があります。
日本における他施設研究の結果、ビタミンDレセプター遺伝子多型で骨密度の低下を招きやすいリスクタイプが慢性歯周炎で多いことが明らかになり、慢性歯周炎のリスク遺伝子である可能性が示唆されています。
いかがでしたでしょうか。
様々な研究結果が出ていますが、歯周病の原因というのは個々で異なります。
患者さん一人一人に、その対策をお話ししていこうと思いますので、定期的な歯科受診をお勧めいたします。