みなさん、こんにちは。
大郷町歯科医院、院長の室月です。
今日は前回の続きで、総入れ歯がどのようにして口の中でくっついているのかをお話ししていこうと思います。
前回は唾液による物理的維持力と陰圧による物理的維持力について説明させていただきました。
今回はその他の要素について、説明していこうと思います。
③筋圧による生理的維持力
上顎では、入れ歯の周りに入れ歯が外れる方向に作用する筋が少なく、筋による影響を受けにくいです。
しかし、下顎では入れ歯が外れる方向に作用する筋が多くあると言われています。
したがって、入れ歯を作るときはこれらの筋に配慮しながら製作する必要があります。
歯が1本もない患者さんには、上方は上顎と軟口蓋に、下方は下顎と口腔底に、内側は舌に、外側は唇と頬によって囲まれたデンチャースペースと呼ばれる空間があり、この中にニュートラゾーンと呼ばれる領域があります。
ニュートラルゾーンとは、咀嚼、嚥下、及び発語などの口腔の機能時に舌によって外側に向けて加えられる力が、頬および唇によって内側に向けて加えられる力によって相殺される口の中の領域をいいます。
入れ歯の歯をこのニュートラルゾーンに排列して、それに合わせるように入れ歯の形態を整えていくことにより、入れ歯のくっつきや安定が良くなると言われています。
④維持力に影響を及ぼす解剖学的因子
(1)顎の大きさ
顎が大きい場合には、入れ歯の面積が大きくなり、入れ歯の維持力は増加して、良好な予後が得やすいです。
(2)顎の形態
顎の形態が丸み帯びている場合には、入れ歯を維持に対する条件が最も良いのに対して、尖っている形態については入れ歯の面積が小さくなり、入れ歯の維持、安定及び発語に関する予後は不良な場合があります。
(3)上顎の深さ
平坦なものに関しては、垂直方向の維持は大きいですが、側方からの力に弱く維持力を失いやすいです。
V字型のものは、側方力に対する維持は強いですが垂直力には弱いです。
U字型のものは、最も望ましい形態であり、吸着や維持力の点では問題が少ないです。
(4)骨隆起の有無
顎の骨がポコッと出ている方もいらっしゃるかと思います。
下顎骨隆起や上顎結節がある患者さんには、十分に入れ歯の面積を大きくすることができず、歯茎との密着性を得られにくいことがあります。
また口蓋隆起が大きい場合も、入れ歯が動きやすく、維持、安定に影響を及ぼすと言われています。
いかがでしたでしょうか。
様々な要素を加味して、我々歯科医師は総入れ歯を患者さんの顎にくっつけているのです。
症例によっては、入れ歯の維持が難しい症例もございます。
最善を尽くしてまいりますが、ご理解いただけますと幸いです。