総入れ歯はどうやって口の中にくっつくのか

みなさん、こんにちは。

大郷町歯科医院、院長の室月です。

今日は総入れ歯がどうやって口の中にくっついているのかをお話ししていきます。

部分入れ歯に関しては、歯に引っ掛けるバネがあるので、入れ歯が口の中にうまくつけられるのは容易に想像できますが、バネがない総入れ歯はいったいどうやって口の中で安定したりくっついたりできるのでしょうか。

まずは、入れ歯が口の中から外れようとする力に対して抵抗する力を入れ歯の維持力と言います。

総入れ歯の維持力は、唾液による物理的維持力、陰圧による物理的維持力、筋圧による生命的維持力、解剖学的維持力に分けられます。

①唾液による物理的維持力

(1)唾液と入れ歯との分子間引力

相対する異なった物体の表面間にみられる分子間引力は、入れ歯では唾液が入れ歯の表面と口の中の粘膜とを同時にぬらして密着するときに働きます。

分子間引力による維持の大きさは入れ歯の面積に比例します。

(2)唾液の凝集力

凝集力とは同種分子間に発生する引力であり、入れ歯表面と口の中の粘膜との間に介在する唾液層に生じます。

凝集力の大きさは入れ歯の面積の大きさに比例します。

唾液は液体なので、凝集力を有効に発揮させるには唾液層は薄い方がいいです。

つまり入れ歯と口の中の粘膜に対する適合はできるだけ緊密な方がいいです。

(3)唾液と入れ歯との間の界面張力

界面張力とは適合が良好な2面間に介在する液体の薄層によって生じる張力または抗分離力であり、入れ歯表面と口の中の粘膜との間に介在する唾液層に生じます。

界面張力の大きさは入れ歯の面積に比例し、入れ歯と口の中の粘膜との間の距離に反比例します。

界面張力による維持効果を発揮させるには、入れ歯の適合を良好にすることが必要となります。

②陰圧による物理的維持力

総入れ歯に外れる力が働いたとき、入れ歯の全周にわたって完全な辺縁封鎖が存在すれば、入れ歯表面と口の中の粘膜との間は陰圧になり、入れ歯の維持力として作用します。

この維持力は吸着力と呼ばれて、入れ歯の縁の形態や設定位置が重要となります。

いかがでしたでしょうか。

今回は入れ歯が口の中の粘膜にくっつく要素として、唾液による物理的維持力、陰圧による物理的維持力についてお話ししました。

次回は、まだお話ししていない、筋圧による生命的維持力、解剖学的維持力についてお話しできればなと思います。

まだまだ寒い日が続きますので、体調を崩さぬようくれぐれもご自愛ください。