誤嚥性肺炎の予防48

皆さん、こんにちは。大郷町歯科医院の院長、嶋です。
6月も残りわずかで終わります。また暑い夏が来ますね。自分は季節ごとの食材をちゃんと食べるようにしています。夏になるとスイカやなす、うなぎなど旬のものを取り入れて健康管理をしていくことで体調もよくなります。皆さんも、その季節の食材を取り入れて健康になりましょう。
今回も誤嚥性肺炎についてお話ししていきます。
誤嚥性肺炎は、気管に流れこんだ異物を足がかりに して、細菌が肺に感染して起こる病気です。
高齢になると、のどの筋力が弱くなって、上手に飲 みこめなくなり、のどの中に食べものの残りカスや睡 液がたまってしまいます。それに気がつかないうちに気管に食べものが流れこんでしまいます。気管に異物 が入っても、うまく吐き出せれば、肺炎は起こりませ ん。しかし、気管の感覚も鈍くなると、咳やむせが出 ず、肺に異物が入ったまま外に出せなくなってしまいます。そうすると、肺が汚くなり、肺炎が起こります。 つまり、高齢者が肺炎にかかりやすいのは、うまく飲みこめなくなることが原因なのです。
誤嚥性肺炎はふつうの肺炎とはちがい、比較的ゆっ くりと症状があらわれます。 なぜなら、しっかり飲み こめなくなっても、はじめはわずかしか異物が肺に流 れこまないからです。 異物が少し入ったくらいでは、軽い炎症しか起こらず、症状はほとんどありません。
高齢者が肺炎になっても、症状があらわれにくい理由がここにあります。
細菌性の肺炎の場合、抗生剤を投与して治れば、 そ れでおわりです。 しかし、誤嚥性肺炎は、うまく飲み こめないかぎり、炎症がずっと続きます。肺炎をくり返すことで、だんだん抵抗力や体力を奪われてしまい、死に至るのです。
まん延する誤嚥性肺炎に対策が必要
誤嚥性肺炎はあまり聞きなじみのない病気だと思い ます。しかし、誤嚥性肺炎は、日本中でまん延してい ます。年間約4万人の死因がこの病気なのです。 誤嚥性肺炎が爆発的に増えているいま、 この病気をどのように減らしていくかを 真剣に考えなくてはなりません。
誤嚥性肺炎で入院すると、退院後もす べての栄養を口から摂取できる人は38% にとどまります。つまり、誤嚥性肺炎に かかるくらい「飲みこみ力」が弱くなる と、自立した生活ができなくなる可能性 が高くなります。
栄養を口からしっかり摂取できない場 合は、鼻にチューブを入れたり、お腹に あなを開けたりして、栄養を注入しなければなりません。そうなると、生活のすべてに介助が必要になってしまいます。また、誤嚥性肺炎後の1年以内の死亡率は7%、2年以内だと50%と報告されています。 こ の死亡率は、進行したがんに匹敵するほど悪い数字で す。
つまり、誤嚥性肺炎にかかるくらい「飲みこみ力」 が弱くなると、治る可能性はかなり低いのです。
参考文献 メイツ出版 「のどを鍛えて誤嚥性肺炎を防ぐ 嚥下トレーニング」