歯周病と全身疾患(肝炎編)

こんにちは。大郷町歯科医院の橋本です。前回、虚血性心疾患と歯周病の関連性について、お話しましたが…今回は、あまり歯周病との関連性が知られていないNASH(非アルコール性脂肪肝炎)のついてのお話をしたいと思います。

 

NASHとは、アルコールを摂取していないにも関わらず肝臓に脂肪が蓄積し、脂肪肝から慢性肝炎、肝硬変、肝がんに進展していく病気です。以前はアルコールによる脂肪肝が多かったのですが、今は、飲酒歴がなくても生活習慣病によっておこNASHが増えてきているようです。

そもそも、体内に侵入した細菌のほとんどは退治されますが、悪玉の歯周病菌は体内で数時間から10時間も生き残ることがわかっています。その歯周病菌が血流にのって脂肪の多い肝臓にたどり着くと炎症が起き、それが新たな刺激となって、NASHが進行していくのではないかと考えられています。

実際、歯周病菌を保有するNASH患者に歯周病の治療をしたところ、3ヶ月後には肝機能を示す数値がほぼ正常になるまでに改善しました。軽度のNASHの場合には、歯周病を治療し、その後も歯周組織を適切な状態に維持することで、肝機能の改善が期待できると考えられます。

ここで、勘違いしてはいけないのが…これらの研究はNASHの患者を対象にして行われているということです。なので、そもそも健康ではあるけれど肝機能が少し落ちているという程度の人の場合にどれくらい歯周病治療の肝機能改善効果があるかはわかっていません。すなわち、歯周病菌が元々の非アルコール性脂肪肝炎の原因では無いという事です。専門的な言い方をすると、増悪因子であるということです。元々、NASHに罹患している肝臓でないと歯周病菌が血流にのって肝臓に到達したとしても、炎症を起こすかどうかは定かでないということです。

肝臓は沈黙の臓器といわれています。それは肝臓は再生能力・代償能力に優れ、ダメージを受けても残った正常細胞が余分に働き、機能を維持するからです。肝臓は痛みなどの症状を出すことがあまりないので、肝臓に異常があっても気付かず、異常に気付いたときには病気がかなり進んでいることがあります。NASHが疑われる場合は、早い段階で生活習慣を見直す事が大切かと思われます。

今回は、歯周病とNASHの関連性をお話しました。もう一度、最後に記載しておきますが、あくまで関連性(増悪因子)です。NASHの原因が歯周病とは言っていませんので…注意して下さい。