みなさん、こんにちは。
大郷町歯科医院、院長の室月です。
前回、抜くべき歯についてお話ししていきました。
今回は、抜くべきではない歯についてお話ししていきます。
どんな歯が抜歯の禁忌になるのでしょうか。
抜歯の禁忌症には、歯自体は抜歯の適応であっても、全身的な原因で抜歯の禁忌症となるものと、 局所的な原因で抜歯の禁忌症とみなされるものに大別されます。
かつて抜歯の禁忌症とされた種々の全身的疾患も、対応する治療法が開発されるにつれて、禁忌症とされることが少なくなってきました。
しかし、抜歯のストレスや侵襲が契機となって全身的に重篤な状態になる場合も少なくないので、原として疾患の急性期あるいは進行期には、抜歯は避けなければならないといわれています。
(1)全身的禁忌症
a.心·血管系疾患
種々の虚血性心疾患では術中の偶発症を伴いやすいので、内科医との十分な連携なしに抜歯すべきでないです。
とくに、心筋梗塞の発作から6か月以内の外科的処理は、絶対的禁忌とされています。
高血圧症もコントロールされていない状態では危険です。
十分コントロールされるのを待ってから抜歯を行うべきであるといわれています。
心臓弁膜疾患や人工心臓弁置換術を受けている患者では、抜歯時の菌血症から心内膜炎を発症する危険があるので、抜歯前後に抗菌薬の十分な予防投与が必要となります。
b.内分泌系疾患
内分泌系疾患のうち、副腎皮質機能低下症では副腎皮質の反応性が低下しているので、抜歯のストレスに対して容易にチアノーゼ、低血圧などのショック症状(副腎クリーゼ)に陥りやすいです。
したがって、抜歯に際しては、副腎皮質ホルモンの (ステロイドカバー)が必要です。
c.代謝性疾患
代謝性疾患で、抜歯時にもっとも注意しなければならないのは糖尿病です。
尿糖が陰性でよくコントロールされている場合はあまり問題ないといわれています。
十分にコントロールされていない場合は、感さに対する抵抗力が減弱し、治癒能も低下してい抜歯のストレスは内因性カテコールアミンの分泌を促進し、血糖値を上昇させます。
また、抜歯後の食事が不規則になることから、低血糖発作を起こさないよう注意しなければなりません。
d.血液疾患
血友病、特発性血小板減少性紫斑病、血小板無加点、重症肝硬变、抗血液凝固薬使用中の患者など種々の出血性素因を示す疾患があります。
これらは絶対的な抜歯禁忌ではなく、内科医と連携してそれぞれの疾患に応じた周到な準備をすれば抜歯が可能といわれています。
e.妊娠中の女性
妊娠の初期(12週まで) や晩期の外科侵襲は、 流産や早産を引き起こすおそれがあることから、 妊娠5~7か月の安定した時期がよいとされています。
これらの期間以外に抜歯が必要と考えられた場合には、対症的処置を先行させ、許される時期に抜歯を行います。
f.月経中の女性
月経は必ずしも抜歯禁忌ではありませんが、精神的、肉体的不安定状態にあることから、月経時は避けるほうがよいとされています。
(2)局所的禁忌症
a.急性期の化膿性炎症の原因歯(急性歯槽骨炎、急性顎炎、急性智歯周囲炎など)
歯性炎症が急性肌炎や蜂窩織炎に進展した時期の抜歯は、かえって刺激となって症状を悪化させます。
炎症の進行期には切開、根管開放、歯肉ポケットの洗浄や十分な薬物療法を行って、消炎した後に抜歯を行います。
b、悪性腫瘍内に植立する歯
抜歯の刺激により腫痛が急激に増大したり、腫瘍細胞を播種させる危険が増します。
とくに、悪性黒色腫のように血行性転移をきたしやすい種痛内の歯は抜歯すべきでないといわれています。
C. 放射線照射野に含まれる歯
顎骨に60~70 Gy以上の照射を受けていると、 顎骨は代謝活性の低下、血行障害、免疫能の低下をきたしています。
このような状況で抜歯すれば容易に感染し、放射線骨髄炎に至り、広範囲の腐骨を形成して何年も治癒しません。
口腔癌、咽頭癌などで顎骨に放射線照射を受けた既往のある患者では厳重な注意を払い、放射線医と相談して治療を進めなければなりません。
d. 顎骨中心性血管腫内の歯
顎骨中心性の血管腫内の歯を抜歯した場合、止血困難で多量出血をきたす危険性が高いです。塞栓療法などによる局所止血法や血管腫に対する治療を行わない抜歯は禁忌といわれています。
いかがでしたでしょうか。
抜くべき歯と、抜くべきではない歯についてお話ししてきました。
ご自身でも、この歯は抜いた方が良いのかな?と思う歯がありましたら、遠慮なくご相談ください。