みなさん、こんにちは。
大郷町歯科医院、院長の室月です。
さて早速ですが、今日は高齢者の歯の神経の治療についてお話していきます。
まずは歯というのは加齢とともに形態が変わっていきます。
たとえば、奥歯の咬む面であったり、前歯の先端は咬耗によって削れていきます。
また、生理的または病的な歯の動揺によりその隣の歯が擦れ、隣の歯のエナメル質の摩耗がみられることがあります。
このような変化は、若い時から始まっていますが、高齢者において顕著になっていきます。
歯の表面のえぐれているような欠損(くさび状欠損)や、エナメル質の破折や歯の亀裂も高齢者によくみられる所見です。
象牙質、歯の神経におきましても全身的な老化と同様の変化は起きますが、特徴的なのは新たな象牙質が作られ、歯の神経の部屋の容積が小さくなることです。
高齢者では神経が入っている管が狭まり、時には閉鎖してしまうため、神経の治療をする際のアプローチが非常に難しくなっていきます。
さらに歯の神経の部屋の容積が減少することにより、歯の神経への血液の供給が減少し細胞が活性化されないため、歯がもろくなることがあります。
歯の神経に入る動脈性の血管も10~20代では通常3~4本ですが、40~70代では1本程度になるといわれています。
また歯の知覚は老化により閾値が上昇、つまり温度などへの反応が鈍くなります。
これは神経細胞の減少、象牙質の厚みの増加などによるものだと言われています。
先述した通り、老化により象牙質はより折れやすくなると言われています。
実際、ヒト歯冠象牙質を用いた試験では、若者(平均25歳)の方が高齢者(平均62歳)より明らかに破壊されにくいことが、研究結果で出ています。
これは老化による、象牙質や歯の神経の含水率の低下のためと考えられています。
また、象牙質のコラーゲンは代謝されないため、加齢により蓄積された象牙質の小さな亀裂が象牙質破折の原因とも考えられています。
実際、臨床の場において高齢者の歯の破折にはよく遭遇しますが、歯の神経の治療の結果、歯が薄くなることになり破折したと思われるケースも多いことから、高齢者の歯の神経の治療においてもできるだけ健康な歯を削らない、温存するミニマルインターベンションという考え方が非常に重要になっていきます。
いかがでしたでしょうか。
高齢者の歯の神経の治療は、若い方と比べて歯の構造が変わっているので、留意しておくことが増えていきます。
何かご不明な点、ご質問がありましたら、気兼ねなくお尋ねください。