誤嚥性肺炎の予防 49

皆さん、こんにちは。大郷町歯科医院の院長、嶋です。

今回も誤嚥性肺炎についてお話ししていきます。

飲み込み力が弱くなるとどんな症状が現れるのか?

「飲みこみ力」が弱くなり誤嚥性肺炎にかかるまで、からだの中ではどのようなことが起こっているのでしょ うか。悪くなる過程を見ていきましょう。

①唾液がのどにたまる

まず、唾液がのどにたまるようになります。 唾液が のどにたまると、飲みこむときにつまった感じがした りこもった声になったりします。また、のどがつまった感じや違和感があらわることもあります。 唾液がのどにたまっても、のどの感覚が鈍くなって いる場合、症状があらわれないこともあります

②夜間に唾液が気管に流れこむ

寝ている間は意識がありません。無意識の状態では、 気管に異物が流れこんでも気づきにくくなります。 で すから、「飲みこみ力」が弱くなると、まず、寝ている間に唾液が少しずつ気管に流れこむようになります

気管に流れこむ量や回数がふえると、夜間に咳が出るようになってきます。

年をとってくると、胃や腸の働きも悪くなります。 すると、食べものや胃酸がのどに戻ってきてしまいま す。とくに、睡眠中はからだを横にしているので、食 道から逆流してきたものが気管に流れこみやすくなります。

食道からの逆流を防ぐには、食後2時間は横になら ずに、頭の位置を高くして寝るようにしましょう。

③頻繁に食事で誤嚥する

さらに、「飲みこみ力」が弱くなると、食事中に食 べものや飲みものが気管に流れこんでいきます。 そう なると、気管から食べものを排出するため、むせたり 咳をしたりするようになります。また、食べきったと 思っていても、のどに食べものが残ってしまいます。

残った食べものは、少しずつ、気管の中に流れこみ、 食後にもむせや咳が起こります。

しかし、それでもすぐにひどい肺炎にかかるわけで はありません。気管に食べものが入っても、咳が反射的に出て、気管から食べものが排出されるからです。

④症状がはっきりしない肺炎が起こる

気管に流れこむ唾液や食べものの残りかすが増えて くると、少しずつ肺に炎症が起こるようになります。 最初は、炎症の程度が軽いので、発熱や痰などといっ た症状がはっきりしません。そのため、本人もまわりの人も肺炎が起こっているとは気づきません。しかし、 このような肺炎をくり返すと、食事の量が減っていな いのに体重が減っていきます。 肺炎によって、体力や 抵抗力が削られていくからです。 嚥下障害がひどくな るにつれ、徐々に炎症が重くなると、咳や発熱といった症状がはっきりするようになります。

⑤重症の肺炎を起こす

咳嗽反射が衰え、気管に異物が入っても咳が出なく なると、異物がそのままとどまり、 それを足がかりに細菌感染が起こってしまいます。 これが目に見える誤 嚥性肺炎です。病院に入院するくらいの誤嚥性肺炎は、 これくらい 「飲みこみ力」が弱くなって起こるのです。

参考文献 メイツ出版 「のどを鍛えて誤嚥性肺炎を防ぐ 嚥下トレーニング」