歯周病と全身疾患(骨粗鬆症)

こんにちは。大郷町歯科医院の橋本です。

前回に引き続き、歯周病と全身疾患の話をしていきたいと思います。今回は第三弾ということで、骨粗鬆症との関係について、お話します。歯周病と骨粗しょう症の関係は1960年代から注目されるようになり、これまでに数々の研究結果が報告されているようです。

まず最初に、皆さんもよくご存知かと思いますが、骨粗鬆症とは「骨の量(骨密度)と骨の成分(骨質)からくる骨の強さ(骨強度)が低下することで、骨折しやすくなった状態」を指します。骨吸収と骨形成という新陳代謝のバランスが崩れて骨密度が低下した状態です。

あまり聞いた事は無いかもしれませんが、骨の破壊だけでなく、歯周組織の炎症を抑える作用を持つ女性ホルモンというものが存在しています。その名をエストロゲンと言います。

特に女性の場合ですが、閉経後にエストロゲンの分泌量が急速に減少する為、骨吸収が異常に高まり、骨形成が追いつかなくなり、骨粗鬆症のリスクは高まります。閉経後の女性に骨粗しょう症が多いのはその為だといわれています。

また、歯周病に関しても骨密度を低下させるという面から、顎骨や歯槽骨の骨密度の減少を引き起こす危険因子でもあることがわかってきました。更に、エストロゲンの減少は、炎症性サイトカイン(免疫システムの細胞から分泌される炎症に関係するタンパク質)やプロスタグランディン(ホルモン様物質)の異常産生を招き、歯周病菌によって生じた炎症を、さらに悪化させるという事が分かってきました。

すなわち、骨粗鬆症(エストロゲンの減少)は歯周病の増悪に大きく関与している事がわかります。

閉経後の女性に対してエストロゲンを補うホルモン補充療法を行うと、全身の骨の状態が改善するとともに、歯槽骨の状態も改善し、歯を失うリスクが低下するというデータもあるようです。

骨粗しょう症と歯周病の関係は、まだ全ては解明されていません。今後研究が進めばさらに色々なことがわかってくるでしょう。更年期以降の女性では、歯周病と骨粗しょう症は、予防においても治療においても、一緒に取り組んでいくほうが、有効であるということは確かです。

因に、女性ホルモンのエストロゲンによく似た作用をする成分にイソフラボンがあり、これは食事(大豆製品)から摂取することができます。骨粗鬆症、そして歯周病の予防には、適度な運動や栄養バランスのとれた食事を心がけることが重要だと言えますね。