歯周病と全身疾患(早産)

こんにちは。大郷町歯科医院の橋本です。

引き続き、第四弾ということで、今回は歯周病と早産の関係についてお話します。これまた、歯周病と早産なんて関係あるのか不思議に思われる方も多数いらっしゃるとは思います。実際、関係性を否定する論文もあったようですが…近年、歯周病と早産の関連を裏付けるメカニズムも少しずつ解明されてきたようです。

まず、陣痛は子宮収縮作用のあるプロスタグランディンという物質の分泌が高まって起きます。このプロスタグランディンの分泌を促すのがサイトカインという炎症によって増える物質です。
その為、細菌などに感染して絨毛膜や羊膜などが炎症を起こすと、早産の原因になるわけです。炎症によりサイトカインが増えて、その刺激でプロスタグランディンが分泌され、子宮の収縮が起きて早産になるというわけです。

また、歯周病は歯周病菌によって炎症を起こしている状態だからです。歯の周りの炎症によりサイトカインが増加し、やはりその刺激でプロスタグランディンが分泌され、子宮の収縮が起きて早産…となるのです。

1996年、S offenbacherらがアメリカ歯周病学会(AAP)の学会誌に発表した「Periodontal Infection as a Possible Risk Factor for Preterm Low Birth」という論文によると、妊娠している女性が何らかの歯周病にかかっている場合、早産や低体重児出産のリスクは7倍にも跳ね上がると書かれています。因に、これは喫煙や飲酒、高齢出産などが早産に影響を及ぼすリスクよりもはるかに高い数値らしいです。

更に、悪い事に…妊娠中の女性は、女性ホルモンの関係で歯肉炎にかかりやすくなるといわれています。また、つわりの影響で安定した量の食事ができなくなるため、少しずつの食事を断続的にするしかなくなる、嘔吐によって口の中が酸性に傾など、口腔内の衛生に悪影響を与える因子が増え、歯周病にかかりやすい状態になってしまいます。

このようなリスクを軽減する為には、妊娠する前から定期検診を受けて、歯周病や虫歯を治療して口腔内環境をしっかり整えておくことがとても重要になってきます。それは、口腔内環境が悪い状態で妊娠してしまうと、そこから治療に入ると、ケース(つわりや麻酔の影響等)によっては十分な治療を提供する事が出来ず、出産までの間に歯周病を改善する事が出来ない可能性があるからです。